うちわ 2012 7 21

 私は、毎日、日本経済新聞Web刊の「でんき予報」を見ています。
今週は、暑い日が多かったせいか、
比較的余裕があると言われた東京電力エリアでも、
予想最大値において、
電力の使用率が90%台(使用量/供給力)に乗る日がありました。
 90%台になってくると、気になることがあります。
東京電力エリアには、いや他の電力会社も同じですが、
昨年、電力不足を受けて、急遽、古い火力発電所を再稼動させたケースや、
老朽化した火力発電所をフル稼働させているということを聞いたことがあります。
 こうした電力不足という問題は、原子力発電所の停止もありますが、
我々が、電力を大量消費する生活に慣れてしまっていることも原因でしょう。
 私が子供の頃は、いや青年の頃も、
エアコン(クーラー)というものはありませんでした。
親からは、「あれは金持ちの持ち物だ」と言われたことがあります。
 だから、私は、「金持ちの子供と友達になろうか。
金持ちの家に遊びに行けば、クーラーの効いた快適な部屋がある」と思ったものでした。
 実は、クーラーどころか、扇風機の数も少なかったのです。
家には、扇風機が2台か3台しかなかったのです。
大家族でしたので、これでは、とても扇風機の数が足りません。
 しわくちゃの教科書と参考書。
そういう状況でしたので、「うちわ」は必需品でした。
 しかしながら、右手で鉛筆を持ち、左手で「うちわ」を使っても、
大粒の汗は、教科書や参考書の上に落ち、勉強の効率も落ちるばかりでした。
 「心頭を滅却すれば火もまた涼しい」
学校の先生からは、そう言われましたが、私は「科学的でない」と思いました。
 ちなみに、この時代は、クルマに乗る時も、「うちわ」が必需品でした。
カーエアコンが高価であることもありましたが、
バッテリーが貧弱だったのも、カーエアコンをつけられない原因だったでしょう。
 そういうわけで、信号で止まると、車内は暑くなります。
そこで、「うちわ」が必要となったのです。
 さて、現代に戻りましょう。
私は、そういう環境で育ったせいか、暑さに強く、
今でも私の書斎にはエアコンをつけていません。
扇風機で十分と思っています。
 数年前、風の噂で聞いたことがありますが、
海外では、地球温暖化防止の旗振り役の著名人が、
豪華な自宅でエネルギーを大量消費していた事実が発覚し、
非難を浴びたということを聞いたことがあります。
 「隗より始めよ」
事をおこすには、まず自分自身から着手せよの意(広辞苑)。
(注意)
 私の場合は、生まれつき、
大量に汗をかき、大量に水分を取るという体質なので問題ありませんが、
代謝能力の衰える高齢者は、積極的にエアコンを使ってください。

カラス 2009 9 5
 子供のころに、贅沢を覚えてしまうと、その後の人生は険しい。
子供は認識力が低いから、「豊かであることは当然」と考えてしまう。
そして、大人になっても、子供時代の豊かさが忘れられない。
それが人生の再出発を困難にする。
だから、子供時代に豊かであることは、不幸かもしれない。
もちろん子供に非はなく、
親ばかが子供を不幸にしてしまう。
 私の子供時代は、まだ戦後復興の気配が残る時代で、
都市部はともかく、地方の農村部は貧しかったのです。
 だから、「おやつ」という贅沢なものはなかったのです。
しかし、成長期だった私には、昼食と夕食の間が、あまりにも長かったのです。
 自然の恵みが、私の空腹を満たした。
どこの家でも、庭に果樹があり、初夏には桃、盛夏には梨、秋には柿と、
空腹を満たす食料には不足がなかったのです。
 しかし、冬が近づくと、果樹は冬支度を始める。
「俺たちは、カラスと同じだね」と、友達がつぶやく。
 そのとき、果樹の仲間たちの思いは強いものとなっていく。
僕は学問で身を立てる。
俺は有名なスポーツ選手になる。
手に職をつけて立派な職人になる。
 「どうして、うちは、お金がないのか」と祖父に聞いたことがあります。
祖父は言う。
「我が家は、数百年続く家系だ。
江戸時代には、幕府の旗本や御家人だった。
広大な農地があり、寺院を寄進するほどだった」
子供の私は思う。
「江戸幕府は、明治維新で敗れ、日本は、太平洋戦争で敗れ、
つまり、我が家は、没落貴族だったのか」
 今にして思えば、私は、祖父に、つらいことを聞いてしまったかもしれません。
祖父は、子供時代は豊かだったかもしれません。
私が子供時代に、玩具として遊んだ紙切れは、戦時国債だったと思います。
そのような紙切れが大量にありました。
 「国破れて山河在り城春にして草木深し」と思える人は、人生の達人であって、
たいていの人は、人生の不幸を嘆く。









































































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